〒963-8061 福島県郡山市富久山町福原字境田50-2
和名: オオスズメバチ
学名: Vespa mandarinia
英名: Asian giant hornet
分類: ハチ目 スズメバチ科 スズメバチ属
分布: 北海道、本州、四国、九州、佐渡島、対馬、種子島、屋久島
(注)海外では、朝鮮半島、中国、インド、インドネシア、ヒマラヤ、台湾などに分布する(松浦、1995)。アメリカ合衆国では、ワシントン州では、2020年にオオスズメバチの営巣が初めて確認されている。
飛んでいる姿は、親指くらいの大きさ(実際はそこまで大きくないが)という表現がピッタリで一度見たら忘れられない大きさです。「ブーン」という轟音の羽音を立てながら飛びます。
スキンヘッドにしたような大きな頭で、全体がオレンジ色です。腹部末端のお尻部分はオレンジ色です。
女王蜂と働き蜂は、顔にある鼻のような形をした頭楯(とうじゅん)の突起は2個あります(ただし、雄蜂の場合は異なった形をしています)。一方、形態が非常に似ているコガタスズメバチの頭楯の突起は3個です。オオスズメバチかコガタスズメバチか迷った時は、この突起の数が決め手になります。
里山や山間部に巣を作ります。福島県内では家屋付近に巣を作っていることも多く、警戒が必要なスズメバチです。
切り株、木や竹の根元など空隙が多い やわらかい土の中、大きな樹木の樹洞など、閉鎖的な空間に巣を作ることが多いです。土の中に巣を作るときは、土手など傾斜地に好んで作ります。
伐採木や剪定した枝葉を積み重ねている場所も巣を作りやすいです。その場合、地面近くで伐採木や枝葉の腐食が進み土壌化した柔らかい所に巣を作ります。まれに家屋の床下に作ることもあります。
オオスズメバチは、家族が増えて巣が狭くなると拡張するために土を掘ります。掘り出した土を直径5mmくらいの小粒にして、それを口にくわえて巣の外に搬出して巣を少しづつ拡張してゆきます。
そのため、土が柔らかくて掘りやすく、掘り出した土の小粒を転がすのに都合がいい傾斜地を選んで巣を作っているように見えます。
そして、巣が大きくなった秋頃には、巣の出入り口を起点として水が流れ出したように細かな土の粒子が扇状に拡がって堆積された光景になります。この秋の光景は「オオスズメバチの巣がここにあるよ」というシグナルになります。
福島県内のオオスズメバチの営巣時期は、5月~11月頃までです。5月から越冬を終えた女王蜂が単独で巣を作りを始めます。オオスズメバチの成虫数は最盛期で数百匹です。
秋の繁殖期には、新女王蜂と雄蜂は、1つの巣で それぞれ数十匹~数百匹ほど誕生します。
羽化した新女王蜂たちは、越冬準備のため巣内にしばらく滞在し、越冬を乗り越える十分な栄養を体内に貯蓄します。
それから巣を離れ、雄との交尾で受精嚢という器官に精子を貯蔵し、ただちに土中などに越冬します。新女王蜂たちと雄蜂たちは、巣を離れたら戻ることはありません。
来年に子孫をつなぐ女王蜂(新女王蜂)は、秋に誕生します。そして、翌春に越冬を終えた女王蜂(創設女王蜂)は、巣作りを始めて秋まで家族を増やし、命が尽きます。女王蜂の寿命は1年です。一方、働き蜂や雄蜂の寿命は、数か月と短く越冬することはありません。
営巣期間が終わった巣は、残っていた働き蜂も寿命で死に絶え空っぽになります。そして、1回使った巣は、2度と使われることがない廃巣となって風化してゆきます。
オオスズメバチは、スズメバチの中では最も攻撃性が高いです。さらに、他のスズメバチと違って、スズメバチやミツバチ、アシナガバチ、クロスズメバチ類を集団で襲う特性があります。
現場状況の確認のためにオオスズメバチの巣に近づいた時、オオスズメバチがとる行動を たくさん見てきました。その時の体験を紹介します。
オオスズメバチの巣の数m近くまで接近してジッーとしていると、巣に戻ってきたオオスズメバチが警戒して周囲を旋回し、なかなか巣の中に戻りません。
それでも静かにジッーとしていると、警戒して巣に戻らなかったオオスズメバチと巣から出てきたオオスズメバチも加わってカチカチと鮮明に聞こえる警戒音をたてながらまとわりつきます。いきなり襲ってくることもありました。
まとわりつくオオスズメバチが少しづつ増えてきます。そして、1~2mくらい先でホバリングして停止し、ねらいすまして弾丸ように頭から突っ込んで、ヘルメットをかぶっていたらコーンと音を立つほど、思いっきり体当たり攻撃してきます。
このような状況になると、次々にオオスズメバチたちが周囲を飛び回って同じように襲ってきて大騒ぎになります。
追いかけられると10m以上逃げて離れても執拗に攻撃してきます。
しばらく放置しても、飛び回っていたオオスズメバチは、なかなかおとなしくなりません。また、静かになったところで駆除を始めようとすると、反応が早く 次々に巣からオオスズメバチたちが出てきて いきなり攻撃してきます。
オオスズメバチの攻撃パターンを示す動画を紹介します。
オオスズメバチの巣がある近くの地面を踏んづけるなどの振動刺激をすると、オオスズメバチたちが巣からゾロゾロ出てきてカチカチと警戒音をたてながら襲ってきます。
山中での被害が多いのも 雑木が生い茂って巣が見えない場所に作るため、知らないうちにオオスズメバチの巣を刺激したことが原因と考えられます。
オオスズメバチの巣がある近くで地面を踏んづけて刺激をする実験をしてみました。すごいことになりました。動画で紹介します。
このように「何もしなくても巣に近づきすぎる」「オオスズメバチを騒がせてしまった」あるいは「巣の近くを通る」だけでもオオスズメバチに襲われます。
オオスズメバチは、他の種類のスズメバチやミツバチの巣の中に豊富にいる幼虫や蛹を狙って集団攻撃して占領した巣、あるいは樹液を集団で占領しているときにも なわばりとして防衛します。
このような場合、占領した場所に いたづらに近づくと襲われることがあります。この占領場所での人に対するオオスズメバチの攻撃力は、オオスズメバチの巣に近づいた時よりは駆除経験から弱いようですが、気を付ける必要があります。
オオスズメバチに襲われたくなかったら、オオスズメバチが頻繁に出入りする場所に近づかないことが一番です。
オオスズメバチでない他の種類のスズメバチは、単独で巣の付近にいるミツバチの成虫を捕まえて肉団子にして1匹ごとに巣に持ち帰ります。ところが、オオスズメバチは、集団でミツバチの巣を襲い、ミツバチに壊滅的なダメージを与えます。
オオスズメバチが集団で飼育中の二ホンミツバチの巣を襲って占領している動画を紹介します。
さらに、オオスズメバチは、キイロスズメバチ、コガタスズメバチ、モンスズメバチ、クロスズメバチ類、アシナガバチの巣を集団攻撃して壊滅的なダメージを与えます。
オオスズメバチが集団で家屋の軒下に作られていた大きなキイロスズメバチの巣を襲って占領している動画を紹介します。
繁殖期になると巣から働き蜂たちが集合フェロモンを放出して野外のたくさんの雄蜂を巣の近くに集めます。
繁殖期になると毎日のように朝から昼頃にかけて巣の入り口周辺をたくさんの雄成虫が、広範囲にわたってものすごいスピードで飛びまわります(群飛)。この雄蜂の行動(群飛)は数週間ほど続きます。
繁殖期には、オオスズメバチの巣を駆除した後でも巣跡で雄蜂が群飛が続くことを動画で紹介します。
越冬のために離巣する新女王蜂が巣から出てくるのを狙って、雄は襲いかかり巣の近くで交尾をします。交尾を終えた新女王蜂は巣に戻らず越冬場所に移動します。
オオスズメバチの集団がスズメバチやミツバチの巣を襲撃する時期は9月~10月ごろです。
オオスズメバチがキイロスズメバチ、コガタスズメバチ、モンスズメバチ、クロスズメバチ類、ミツバチ、アシナガバチの巣の中に豊富にいる幼虫や蛹を狙って集団攻撃するようになります。
この占領期間は、夜間も数匹から十数匹の働き蜂が占領した巣に残っています。占領した巣は、なわばりとして防衛します。この行動は、樹液を集団で占領しているときにもおこなわれます。
エサとして何でも食べるキイロスズメバチやコガタスズメバチと違って、大型昆虫しか食べないので都会での営巣は限られます。
オオスズメバチは、他のスズメバチよりも敏捷性が劣るので動きの鈍いコガネムシなどの大型昆虫、クモやイモムシ等を狩ります。
畑作物や森林の重要害虫であるコガネムシやカミキリムシなど表皮が硬い甲虫類も強靭な大あごで筋肉をかじり取ることができます。
オオスズメバチは、多くの害虫を捕食することで農業や林業を守ることに大きな役割を果たしているのです。また、キイロスズメバチやコガタスズメバチなど刺傷被害を引き起こすスズメバチの有力な天敵として 自然界のバランスを保つためにも貢献しています。
一方、炭水化物源としては、クヌギ等の樹液、アブラムシ等の甘露、ブドウ等の熟果、ヤブガラシやサザンカ等の花蜜を舐めます。どこにでもあるヤブガラシなどを吸蜜する姿は、よく見かける光景です。
わたしは土中に作ったスズメバチを駆除作業中に刺されてしまいました。防護服を着ていたのですが、蜂の巣の撤去作業で地面に右ひざをついた瞬間、その地面にいたオオスズメバチに刺されました。
その痛みは、他のハチから刺されたときとは比較にならないくらい強烈でした。そのとき、刺された直後の応急処置をしました。
わたしの体験談を「オオスズメバチに刺されて応急処置」という記事にまとめたので紹介します。
『図説社会性カリバチの生態と進化』(松浦誠著,北海道大学図書刊行会)
『スズメバチ類の比較行動学』(松浦誠・山根正気著,北海道大学図書刊行会)
『スズメバチの科学』(小野正人著,海游舎)
『スズメバチはなぜ刺すか』(松浦誠著,北海道大学図書刊行会)
『都市のスズメバチ』(山内博美著,中日出版社)
『スズメバチ-都会進出と生き残り戦略』(中村雅雄著,八坂書房)
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