〒963-8061 福島県郡山市富久山町福原字境田50-2
福島県内でのスズメバチ駆除の体験からキイロスズメバチの一年間の生活史を推定してみました。キイロスズメバチは、人間の生活様式にダントツで適応しています。また、ハチに刺される被害で最も多いのがキイロスズメバチによるものです。
キイロスズメバチが巣を作る場所は「開放的な空間」ばかりでなく、「閉鎖的な空間」もと幅広く、どこにでも巣を作られそうです。
「開放的な空間」に巣を作る場所は「様々な建物・施設の軒下や外壁」「庭木・生垣・林をはじめとした樹木」「ベランダ」「建物の天井」などです。
「閉鎖的な空間」に巣を作る場所は「土の中」「天井裏」「床下」「壁間」「庇の中」「樹洞」「墓石」「箱の中」「換気扇の中」などです。
春になると越冬を終えたばかりのキイロスズメバチの女王蜂は、樹液やアブラムシがお尻から排泄する甘露をなめて、まずは体力回復に努めます。
その後、キイロスズメバチの女王蜂は4月下旬~5月初め頃から巣を作り始めます。スズメバチは前年に作られた巣を再利用することはありません。毎年、新たに巣をコツコツと作ります。
キイロスズメバチの女王蜂が作る初期の巣(母巣)は土の中や天井裏など見つけにくいところに作るため、ほとんど見つけることができません。
キイロスズメバチの女王蜂が倉庫に作り始めた巣を駆除している様子を動画で紹介します。
『郡山市でスズメバチ駆除- 倉庫の中で不気味なハチの羽音!蜂の巣はどこ?』
それぞれの場所に作った巣がどんどん大きくなってゆくと、土の中や換気扇の中など狭い空間に作った巣の場合は、空間いっぱいに広がって巣の拡張が難しくなります。
そうなるとキイロスズメバチは、軒下やベランダなどの開放的な広い場所に巣の引っ越しをする習性があります。キイロスズメバチが巣を引越しする時期は、7~8月に行われます。
引っ越してきた巣は、母巣で働き蜂が羽化するごとに集合して労働力が増強され、見る見るうちに大きくなってゆきます。
田村市で玄関先に引っ越してきたキイロスズメバチの巣と、引っ越し前の巣を探索して駆除している様子を動画で紹介します。
『玄関先に引っ越してきたスズメバチの巣を駆除 in 田村市』
女王蜂が巣を最初から天井裏などの広い空間に作った場合は巣を引越すことなく、そのまま巨大化してゆきます。キイロスズメバチの巣はウロコ状の外皮で覆われた卵形のものが多いですが、巣をつくる場所に合わせた形のものも作ります。
福島市で通気口からキイロスズメバチが出入りして天井裏に巣を作っていました。その天井裏の巣の様子と駆除シーンを動画で紹介します。
『福島市でスズメバチの巣駆除・蜂駆除-生きているスズメバチが2階の部屋の床に落ちている!』
9月上・中旬頃から次世代の担い手である雄蜂や新女王蜂が次々と羽化してきます。ピーク時の巣内の成虫数は、働き蜂400~1400匹、雄蜂 と新女王蜂はともに 200~800匹といわれています(松浦)。
羽化した新女王蜂は巣を離れるまでの間、越冬の準備をします。巣内の幼虫が口から出す栄養豊富な分泌物をなめたり、働き蜂が運んできた樹液やアブラムシの甘露などを口移しでもらい、冬を越すための栄養分を脂肪体に変えて腹部に蓄えます(松浦)。
雄蜂は巣を離れると単独で生活しながら、雑木林など特定の場所に集まって飛び回り、そこに巣を離れて飛来してきた新女王蜂と交尾します(山内)。新女王蜂は、雄蜂と交尾後、朽ち木や伐採木などの越冬場所に移動し、来春まで食物を一切とらない越冬に入ります。
福島県の中通りで10月下旬、11月上旬にこのキイロスズメバチの行動を見たことがあります。午前中が最も活動が激しく、樹木や建物があるところでたくさんのスズメバチが超スピードでブンブン飛び回っています。低空で飛んでいるものを捕まえてみたらすべて雄蜂でした。この行動習性を知らないと恐怖感を抱かせるような迫力がある行動です。
秋になって誕生した雄蜂は交尾を終えると、冬を越すことなく短い一生を終えます。越冬を終えて春先から活動してきた女王蜂は1年という長い寿命がつき死んでゆきます。また、巣に残っている羽化後の働き蜂の寿命は1か月ほどと短く、越冬せずに一生を終えます。
キイロスズメバチは、営巣活動の期間が他の種類のスズメバチよりも長く、巨大な巣では12月末まで活動している場合があります。
営巣を終えた巣にアシナガバチたちが集団で越冬していることがあります。
残されたスズメバチの巣は廃巣となり、そのままの形で風化してゆきます。翌年に巣も巣材も再利用されることはありません。
矢吹町で蔵の軒下に作られていたキイロスズメバチの巣を駆除・撤去していたら、その巣の中から集団で越冬するアシナガバチが出てきてビックリしました。その時の様子を挿画で紹介します。
『矢吹町でスズメバチ駆除・ハチ駆除- ビックリ!撤去したスズメバチの巣からアシナガバチが出てきた!』
樹木の高所に作っていたキイロスズメバチの巣を1月に見つけ、巣の撤去後に観察してみました。活発に活動していた巣も1月には廃巣になっている状況を動画で紹介します。
『スズメバチが樹木に巨大な巣を作っていた!1月に長い棒で叩き落したら、どうなる?!』
1月~3月ごろに大きな蜂の巣があるから駆除してほしいというお問い合わせがあります。その場合、蜂の巣の中が空っぽであることがほとんどです。
「春になると、その巣が さらに大きくなるのでは?」というご質問もあります。スズメバチやアシナガバチは巣を再利用しません。同じ場所に巣を作るとしたら、春先に越冬を終えた女王蜂が単独でゼロから巣を作り始めます。そのため、スズメバチの出入りがなく、終焉を迎えたスズメバチは、駆除しなくても何もせずに放置しても問題はありません。
ごくまれに蜂の巣の中にわずかな数のキイロスズメバチやアシナガバチや他のスズメバチが越冬していることがあります。
『もう3月!「大きなスズメバチの巣を駆除してほしい」? in 郡山市』
蜂の巣が気になるようであれば、冬場に巣を物干し竿など長いもので様子を見ながら少しづつ壊して撤去すれば大丈夫です。万が一、ハチがいても寒さで動きが鈍いので、いきなり襲ってくることはありません。スズメバチだけでなくアシナガバチも同様の対応で大丈夫です。このように生活史や対応方法を丁寧に説明したお客様は、ご自分で撤去するという方が圧倒的に多いです。
このような事情がわかっても 蜂の巣を駆除業者に撤去してもらいたければ依頼されればと思います。駆除業者がこのような事情を丁寧に電話で説明してお客様が対応を選択できればいいのですが、現実はそうはいかないことが多いようです。
このことを「知っているかしてないか」で損得が大きく分かれるところです。
参考文献
『原色図鑑 野外の害虫と不快な虫』(梅谷献二編、全国農村教育協会)中の「ハチの仲間」(松浦 誠著)
『都市のスズメバチ』(山内博美著)
『スズメバチはなぜ刺すか』(松浦 誠著)
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