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オオスズメバチの集団攻撃

オオスズメバチ 特有の狩りの方法 -集団攻撃-

オオスズメバチの集団攻撃の概要

オオスズメバチ以外の種類のスズメバチは、単独で巣の付近にいるミツバチの成虫を捕まえて肉団子にして1匹ごとに巣に持ち帰ります。

ところが、オオスズメバチは集団でスズメバチやミツバチの巣を襲撃するという独特の方法で狩りをします。

オオスズメバチの集団攻撃する時期は9月~10月ごろです。

『オオスズメバチが集団で攻撃!屋根裏の二ホンミツバチの巣を襲う!』

オオスズメバチが集団攻撃する背景

オオスズメバチがスズメバチやミツバチの巣を集団攻撃するのには、下記のような背景があります。

①9月ごろになると今まで狩りをしていた昆虫が急激に減少します。

そのころオオスズメバチは、親指くらい大きさもある新女王蜂や雄蜂を育てるためのたんぱく質源として大量のエサが必要になってきます。

親指ほどの大きさがあるオオスズメバチの老熟幼虫と蛹

親指ほどの大きさがあるオオスズメバチの老熟幼虫と蛹

③オオスズメバチは、この時期になると働き蜂の数も多くなって強大な勢力になっています(襲撃する蜂の巣で抵抗する働き蜂たちを鎮圧できます)。

④9月ごろは、他種のスズメバチの活動最盛期で巣の中にはエサとなる幼虫や蛹がたくさんいます(働き蜂もたくさんいます)。

キイロスズメバチの巣(猪苗代町)

最盛期のキイロスズメバチの巣の中は豊富な幼虫や蛹(10月上旬、猪苗代町)

このようなことからオオスズメバチがキイロスズメバチ、コガタスズメバチ、モンスズメバチ、クロスズメバチ類、ミツバチ、アシナガバチなど、それぞれの巣の中に豊富にいる幼虫や蛹を狙って集団攻撃するようになります。

オオスズメバチの集団攻撃から占領までの過程

オオスズメバチは「単独で捕食する」「仲間を誘引する」「集団で攻撃する」という過程をたどって蜂の巣を襲い、「攻撃した巣を占領する」段階でオオスズメバチの巣に肉団子にしたエサを大量に運び出します。

単独で捕虫する

オオスズメバチは床下や屋根裏など見えない場所に作ったスズメバチやミツバチの巣も見逃さずに襲います。

オオスズメバチは、スズメバチやミツバチ、アシナガバチの巣を見つけると、巣に出入りする働き蜂を単独で捕虫して胸の筋肉を肉団子にします。

それを自分の巣に運ぶことを繰り返します。

攻撃されたスズメバチの巣では、多数のスズメバチたちが追撃してオオスズメバチを追い出すことや刺し殺して巣を守っています。

オオスズメバチ vs キイロスズメバチ(三春町)

オオスズメバチに襲撃されて屋根裏に巣があるキイロスズメバチたちが対抗(9月中旬、三春町)

二ホンミツバチは、攻撃してきたオオスズメバチに多数の働き蜂がとりついて蜂球を作ることによって蒸し殺しする方法で巣を守っています。

「単独で捕虫する」の事例を動画で紹介します

二ホンミツバチが神社の石碑の中に巣を作っていました。オオスズメバチが単独で巣に出入りするミツバチを捕虫していました(11月 5日)。

オオスズメバチがミツバチの巣の前で単独でミツバチを狩る!キイロスズメバチも襲う!』

仲間を誘引する

オオスズメバチが餌場として最適な場所だと認識すると餌場の周囲の木などにお腹の末端を左右に振って こすりつけるようになります。この時に末端器官から分泌される「餌場マーキングフェロモン」という化学物質を塗りつけているのです。

そのフェロモンは、近くで狩りをしている同じ巣のオオスズメバチを誘引し、集まってきたオオスズメバチたちは集団で攻撃を始めます。

集団で攻撃する

集団で攻撃中のオオスズメバチは餌場マーキングフェロモンを出して、近くにいる同じ巣の仲間を次々に現場に呼び寄せて攻撃に参加させていると考えられています。

オオスズメバチ vs キイロスズメバチ(三春町)

オオスズメバチが集団で屋根裏に作ったキイロスズメバチの巣を襲撃(10月上旬、三春町)

この集団攻撃によって、ほとんど全滅に追い込まれてしまいます。数十匹のオオスズメバチがミツバチの巣を襲って、3時間で数万匹のミツバチを殺したという事例があるほどオオスズメバチの集団攻撃は激しいです。

「集団で攻撃する」の事例を動画で紹介します

軒下に大きくなったキイロスズメバチの巣をオオスズメバチが集団攻撃をしていました。キイロスズメバチが巣の上に真っ黒になるほど群がってオオスズメバチに対抗していました。

その様相は殺気を感じるほど強烈です。この家の家族8人中4人がキイロスズメバチに刺されていました。

秋にキイロスズメバチの巣を襲うオオスズメバチ!』

攻撃した巣を占領する

戦闘が行われた蜂の巣の下を見るとオオスズメバチたちの死骸も散らばっていることから、集団攻撃はオオスズメバチにとってもリスクがあることがわかります。

攻撃相手の反撃がなくなると、オオスズメバチは巣の内部にあるサナギや幼虫を引き抜いて、自分の巣に持ち運びます。小さいミツバチの場合はそのまま、大きなスズメバチの場合は肉団子にして運びます。

占領した巣の中の幼虫や蛹がなくなるまで同じ巣の働き蜂たちによって次々に運び出されます。その運び出す作業は巣の大きさによって異なり、数日から2週間ほどかかります。直径25cmほどで活動最盛期 9~10月のキイロスズメバチの巣では、集団攻撃から1週間もかからずに運び出されていました。

ミツバチの場合は、幼虫や蛹を運び終わった後も1~2か月かけてハチミツを運び出します。

オオスズメバチが二ホンミツバチの巣を占領(矢吹町)

オオスズメバチが床下に作った二ホンミツバチの巣を占領(10月上旬、矢吹町)

この占領期間は、夜間も数匹から十数匹の働き蜂が占領した巣に残っています。占領した巣は、なわばりとして防衛します。この行動は、樹液を集団で占領しているときにもおこなわれます。

「攻撃した巣を占領」の事例を動画で紹介します

軒下に作ったキイロスズメバチの巣をオオスズメバチが集団で攻撃して占領していました。巣にはキイロスズメバチの成虫の姿がほとんどなく、オオスズメバチたちの姿だけ目立ちます。

その巣の下には、たくさんのキイロスズメバチの死骸に混ざってオオスズメバチの死骸も散らばっていました。戦闘の激しさを物語っていました。

会津美里町でスズメバチ駆除- オオスズメバチが占領したキイロスズメバチの巣』

参考文献

スズメバチ類の比較行動学』(松浦誠・山根正気著,北海道大学図書刊行会

スズメバチの科学』(小野正人著,海游舎)

「オオスズメバチの概要」詳細はこちらへ
「オオスズメバチが巣を作る場所」詳細はこちらへ
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